リリング＆BCS／バッハ：ミサ曲ロ短調 BWV232 【1977年録音盤】2CD

バッハ　2枚組
ミサ曲ロ短調 BWV232

指揮：ヘルムート・リリング
シュトゥットガルト・バッハ・コレギウム
シュトゥットガルト・ゲヒンゲン聖歌隊
アーリーン・オジェー(S)
アダルベルト・クラウス(T) 他
録音：1977年

流麗で包み込むような優しさのある名演です。リヒターが聴かせたような、緊張の極限にあって魂の救済を天に叫ぶような痛切さはありません。その代わり、穏やかな心とやさしい眼差しがあります。いかにもリリングらしい、こまやかな心遣いが細部にまで感じられます。バランス設計も見事で音楽の流れに淀みはありません。合唱はリリングのバッハをよく理解した緻密な歌いぶり、合奏団ものびのびと演奏しています。

バッハの演奏史を語る上で欠くことのできない存在、リリング[1933- ]は、ロ短調ミサ曲をなんと５度(1977/1985/1988/1999/2005)も録音しています。当盤はその最初のソニー盤になります。第1回目から第5回目までは28年の開きがあり、その間には少なからぬ芸風の変遷があったようです。単純に演奏時間トータルだけで比較しても、当盤（ソニー盤）は130分近いゆったりしたものですが、5回目の録音は107分と、全体で23分ほど短くなっており、基本テンポがずいぶん速くなったことを窺わせます。楽器についてはこれまで通りすべてモダン・タイプを使用していますが、おそらく古楽界を席巻するピリオド様式の影響もあってのことでしょう。となれば、1回目録音の当盤は時代遅れの演奏かと言えば、全くそんなことはありません。むしろ、ゆったりとした温かな雰囲気がなんとも心地よいです。練り上げられたアンサンブルは、パートの出入りやバランス配分など申し分ありません。オジェー他の独唱も聴きもので全く素晴らしいです。見事なアンサンブルを生み出す合唱もきわめて高水準で、ゆったり構えながらも完璧なコントロールに応えた胸のすくような合唱を聴かせてくれています。合唱もオーケストラも高度な技術水準ゆえに各パートがよく聴こえ、なおかつ十分な重みとパワーを感じさせる進行でどんどん高揚していき、そして感動的なエンディングを迎えます。録音状態も優秀です。

初期国内盤、帯無し
盤面disc1に少しすれありますが再生問題無し

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